No.14 コンディショニングスタジオへの試み
クラブパートナー誌 2007年2月掲載
ジャイロトニックとの出会い
花粉症が気になる季節となってきました。どうやら今原稿を書いている私の鼻もぐすぐす、頭がボーっとした状態になってきています。私の場合は、花粉症の症状が出てくると新しい年の始まりと春の予感を感じます。前月号でもお知らせしたとおり、4月にはいよいよ念願のコンディショニングスタジオ「Studio five ‘f’」がオープンします。最近は、カーブスやビーラインといった小規模フィットネスの勢いに目を見張りますが、私のスタジオの場合は、パーソナルセッションとオーダーメイドレッスンを中心としたコンディショニングのみの小さなスタジオとなります。このスタジオを通して体を動かすことの楽しさと体を学ぶことの面白さを提供できたらと思っています。このスタジオを始めるきっかけとなったのが、ドイツでのジャイロトニックというプログラムとの出会いになります。それは、「一目ぼれ」といってもいいかもしれません。初めに、ジャイロトニックのマシーンを見て、今までのフィットネスジムにある無機質なマシーンと違ってウッド調のまるでそこには家具がどっしりと並んでいるのかと思うような存在感に驚き、同じプーリータワーというマシーンにもさまざまな種類があり、1台1台が個性的だったことに惹きつけられました。次にそのマシーンのデモンストレーションを解説つきで見せていただいて、従来のトレーニングというイメージがいっぺんに変わってしまいました。まるでマシーンとともにダンスを踊っているような光景だったからです。通常、フィットネスジムで見るマシーンは直線的な軌道のトレーニングで、1~2パターンくらいの運動しかできません。ところがジャイロトニックの場合は1つのマシーンでさまざまな動きができ、その動きが曲線的で体のポジションを変えることでさらに動きの多様性が出るという、それはもうマシーンが人を操っているのか人がマシーンを操っているのかわからなくなるくらい釘付けになってしまうデモンストレーションだったのです。私自身がもともとモダンバレエやジャズダンスの指導をしていたことからこのダンス的な動きを作り出すマシーンに興味を持ったことも一因です。さらにこのジャイロトニックの説明を受けた場所というのが、ドイツの病院「バッドクロッツィンゲン」というところで、このマシーンを使ってリハビリテーションを行っている、機能回復を行っているところだったのです。私自身のライフワークとしている「機能改善体操(運動)」という点からみても興味深い運動療法でした。このことがきっかけで私はジャイロトニック、ジャイロキネシスのパーソナルトレーニング指導を始めるようになりました。すでに大阪の「パンジョクラブイズ」といくクラブにマシーンを導入してパーソナルセッションを行っていますが、お客様のほとんどの方が効果を実感し、継続してくださっています。グループレッスンと違って1人1人のお客様と言葉を交わしながら進めていくセッションは、私にとっては非常に遣り甲斐のあるものとなっています。
個人スタジオの試み
今まで大きなフィットネスクラブの中で私も主にグループレッスンを中心に指導していましたが、グループレッスンの良さは十分に理解をしながらも他方で運動を継続できない方、また効果や運動方法を間違って捉えて体を壊す方がいらっしゃる現状を見ると指導者としての力量不足を感じることもしばしばでした。プログラムもトレンドを追いかけてどんどん変わっていくその変化が面白く、新しい顧客層を獲得するためにプログラムの習得に追われて指導をしてきましたが、結局運動を継続されている方は、たまたま自分に合った運動や指導者に出会い、そのことで体の変化や気持ちの変化、さらには人生観まで変わってしまった方は本当にごく一部です。しかし、実際には運動を継続できず、あきらめていく方も多いわけですから、そういった方々は、自分に合った運動を見つけられず、効果を感じることもなく、フィットネスクラブに通うことが億劫になるのかもしれません。入退会のサイクルの早いフィットネスクラブにおいて、指導者である自分に何ができるのか・・・限界を感じてしまうこともしばしばです。運動をやめてしまう人、あきらめてしまう人、嫌な思いをする人の気持ちに私たち指導者はもっと近づかなければなりません。
そんなところからまずは、それなら自分と同じ思いを共有する仲間と一緒に何かできないかということで一昨年はNPO法人いきいき・のびのび健康づくり協会を立ち上げました。仲間が集い、プログラムを考え、2年間の活動の後、今年キーステーションとなるスタジオ開設の運びとなったのです。
身体と心が気持ちいいこと、身体が自由に動くこと、心が解放されていくこと、楽しさや安心感が得られること、とどまることなく進化し続けること・・・思いはどんどん広がりました。1人1人にもっと運動の良さを伝えたいということで5つのコンセプトを打ち出しました。
Feel・・・心と身体で感じて動く
Flow・・・身体と心がつながって、連鎖して動く
Free・・・どんどん自由に解放されて動く
Fun・・・もっともっと楽しく、明るく動く
Functional・・・機能的な身体と心、自分を知り、学びながら動く
という5つのfを大切にStudio Five ‘f’の活動はいよいよ3月下旬から始まります。
指導者のためのコンディショニング
さて、このスタジオではジャイロトニック以外にもリフォーマーを使ったピラティスのセッションも受けることができます。ジャイロトニックが螺旋的な動きによって身体の動きを遠心的に引き出すとしたなら、ピラティスは身体の芯を作り上げていく求心的なエクササイズのような感じがします。この両方のエクササイズをバランスよく行うことで私の場合は、膝と腰の調子が見違えるほどにいい状態です。また、アクアエクササイズの指導などデッキでの動作がとても楽になりこれは60代でもアクアエクササイズをガンガン教えられるのでは?(笑)と思うほどです。実際にアクアエクササイズの養成コースでジャイロトニックとピラティスの要素を取り入れたムーブメント練習をすると見違えるほどにウォータームーブメントがよくなります。アクアエクササイズの指導者からの相談で多いのが、怪我と指導の体力的な限界です。スポーツ選手も同じだと思いますが、プロであるならばその悩みはつきものです、そのために自分自身のコンディショニングが必要になるわけです。とかくレッスンに追われて自分自身の身体のメンテナンスが後回しになりがちだと思いますが、これからの指導者は、自己管理ができキャリアを長く積んだ人が必要とされるでしょう。そのためにも自分自身のケアを怠らなかった人が生き延びていくのだと思います。指導者の私たちが長くキャリアを積むことは、多くの参加者に対応できる能力を身につけるということですからコンディショニングはとても重要です。
「Studio five ‘f’」は指導者の皆さんにまずパーソナルセッションを受けていただきたいと思っています。指導者の皆さんが自分自身の身体を知らなければ、当然お客様の身体のことは何も言えません。まず、自分の身体が楽に動くこと、気持ちよく動くことを知り、そしてそのことを多くの人に伝えていきませんか?