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No.18 アクアエクササイズのムーブメントとは?~手の操作~

クラブパートナー誌 2007年6月掲載

フィットネスクラブの支配人やプログラム担当者の方からアクアエクササイズのインストラクターは、スタジオに比べて「ノリが悪い」「かっこよくない」「おしゃれでない」などという感想を述べた後に、もっとアクアインストラクターのレベルを上げられないかという相談を受けることがあります。私個人としては、スタジオのインストラクターがみんなお洒落でかっこいいとは思いませんし、アクアエクササイズのインストラクターでも魅力的なひとがいっぱいいると思うのですが・・・ウエアの印象や音楽のテンポ、またアクアエクササイズの独特の動きなどがそんな印象を抱かせるのでしょうか?

さらに、なぜアクアエクササイズのインストラクターのパフォーマンスが低く見られがちなのか考えたときに、先月の指導中の姿勢や態度も大きな要因ですが、実際のレッスン指導におけるデモンストレーションのスキルに問題がある人が多いのではないかと考えます。アクアのインストラクターの方の中には、きちんと動作スキルやプログラム展開スキルなどの教育を受けずに、「とりあえず・・・」で指導をしたり、見よう見まねであったりする人もいるようです。エアロビクスインストラクター養成コースは34ヶ月以上時間をかけて育成される場合がほとんどですが、アクアインストラクター養成コースや社内育成は意外と短期の養成であることが多いこともあるようです。さらには、数時間のレッスン受講のみで、クラスを任されてしまったという人、エアロビクスができるのだからアクアビクスも大丈夫でしょうといわれてしまう人もいるようです。こういったケースの場合は、インストラクター自身も不安を抱えたまま、楽しく思いっきりレッスンができませんし、わからないまま指導を続ける後ろめたさを抱くことになります。そこで今月のテーマはパフォーマンス能力を上げるためにムーブメント(動作)能力を身につけるための考え方をお伝えします。

アクアエクササイズの指導は、主にプールのデッキに立って行うことがほとんどです。スタジオレッスンやマシーンジムでのトレーニング指導、スイミング指導などはどれも参加者と同じ目線に立って、運動指導するわけですが、アクアダンスに代表されるようなアクアエクササイズは、まるで舞台やステージに立っているような距離感でデッキ指導をしていくわけです。ということは、インストラクターの一挙手一投足すべてが参加者の目に入ります。また参加者もライブステージを楽しむかのような空気を感じるはずです。スタジオではインストラクターと参加者が手の届く近い距離感のグループ指導になります。そのため、空間や時間を共有していく連帯感が生まれ、インストラクターも参加者と一緒にずっと動き続け、主に背面で鏡を見ながらの指導になります。ところがプールでは、陸と水という居場所の環境も違う距離感のある中でのグループ指導を考えなければなりません。

鏡もありませんので基本的には対面指導ですし、プールからデッキを見上げるということは、インストラクターは下から見上げられているので、それに合わせたアイコンタクトが必要です。動き続けてしまうとかえってわかりづらいのもステージアクアの特徴です。アーティストが歌を歌い上げたり、参加者と声をかけあったり、握手をしがてら客席に近づいたりするように、動作の指示のためだけに動くのではなく、パフォーマンスとしての動きが求められます。さらに、インストラクターはまるで水の中にいるかのような動作表現をしなければ、参加者に動きが十分につたわらないのです。ここでは、その動作表現のことをウォータームーブメントといいます。今月は、そのウォータームーブメントの身体の使い方を切り口に特に手の操作について書きたいと思います。

アクアエクササイズの手の操作は「スカリング」という水をこねるような、掻く動作がベースとなります。水痛では、手の操作がないとバランスが悪くなったり、運動強度のコントロールができないので、手の役割はいろんな意味を持ちます。それゆえに目的に合わせた手の操作表現が求められます。私がよく見ていて思うのは、手の操作がオーバーすぎて水のイメージができない人や下肢の動作に意識がいってしまい手の操作に無頓着な人が見られます。まず、手の操作は基本的には水中で行うということを考えて胸元より下で動かすことです。腰のあたりでスカリングすると美しく見えます。意外と多くのインストラクターは手のポジションが胸から肩の辺りになる人が多いようです。次に、スカリングは肩で動かすのではなく肘から先の動作として肘関節の回内、回外を行って肩を楽にしておきましょう。スカリングを大きく見せるときは、肩を動かさず、脊柱の屈曲、伸展(背中の曲げ伸ばし)を意識し、体幹の動きに肩、肘の動きを合わせるようにすると肩がらくに動くようになり、連動した滑らかな動作表現となります。スカリングのときに肩を上下に動かしながら行う人、あごや頭を前後に動かしながら行う人をたまに見かけます。指先に水がひっかかる感じ、手の平で水を均(なら)している感じ、やさしくマッサージを受けている感じなどイメージしてみるとよいかと思います。できれば一度、自分の姿をビデオなどで客観的に見るのも良い方法です。

次に、スカリングの基本練習ができたら、その動きの大きさの大小、水を動かすスピードや量、水を動かす方向など強度調節にもつながる表現力を身につけていきましょう。動きの大小は、小さな動きは、肘から先の小さな8の字、動きを大きくするときは、それに体幹部の屈曲-伸展、さらに下肢の屈曲-伸展をくわえて、全身を連動した動作表現にしていきます。水を動かすスピードですが、水の動かし始めはゆっくり重いイメージで、その後は惰流で流れるように、やがてふわっと力が抜けたような軽く浮いたような動作表現にするとよいでしょう。特に水を最初にキャッチする感じは、一度手の力をふわっと抜いて指を軽く曲げたところから水を掴んだ瞬間を表現するためにぱっと指先を伸ばすようにして体幹部から腕が伸びている状態で、腕を動かすのではなく体幹部(主に腹部)から動かすようにすると腕が引きずられたような感じで水を操作しているように見えます。鏡の前で何度も練習すると同時に、プールの中でも水を捉える感覚を養い、さらにそれを、目を閉じてイメージを再構築しながら練習することです。

よく言われることに「エアロビクスは足で踊る」でも「アクアビクスは手で踊る」。つまり手の操作方法が水の表現力にもなりますし、実際には自分のパフォーマンスにおおいにいかされるはずです。反復練習をすることで自分の身体にインプットされていきますから、ただ闇雲な練習ではなくポイントを押さえた練習をしていきましょう。来月は、下肢の連動性です。

 

 

*尾陰由美子の10分間スカリングデモ練習法

  • 手首、手指のマッサージ、両手をよくこすって‘気’を作る。両手のひらを近づけたり遠ざけたりしながら‘気’を十分に感じる
  • わきの下にチビボールを挟んで、手の平で8の字を描く。
  • そのまま胸を張ったり、背中を丸めて、スカリングを大きくする。
  • わきの下からボールをはずして、スカリング練習
  • 指の間にティッシュを1枚ずつはさんでスカリング練習
  • 立位で屈伸をしながら太腿を8の字になでながらスカリング練習
  • 120BPMのメトロノームに合わせて練習