No.31 水中パーソナルのニーズ
クラブパートナー誌 2008年7月掲載
2008年は、「水」に関する講習会の依頼が例年より多くなっています。とくに今年は水中パーソナルの習得研修を神戸、大分、京都で行う機会に恵まれています。
水中パーソナルはまだ多くのフィットネスクラブに導入されているわけでもなく、パーソナルといえば水泳のプライベートレッスンが中心だったと思います。私自身も4年ほど前から水中パーソナルを指導していますが、ニーズそのものは、そんなに多くはないと思っていました。ところが、昨年あたりから「水中パーソナルの勉強をしたい!」「水中のプログラム指導の幅を広げたい!」「フィットネス以外の現場で活かしてみたい!」という声を聞くようになりました。ほとんどのみなさんが、フィットネスクラブのマネージャーやプログラム開発、育成を行っている担当者ではなく、1人1人の指導者からの声です。現場を見れば見るほど、その必要性を感じるとの事でした。フィットネスのグループレッスンだけでは対応できない人が増えてきている、また、水の良さを伝えられるプログラムのバリエーションが少ない、指導者としてもっと多くの人に役立てるように幅を広げたいという思いの指導者達です。
ということで、今月は水中パーソナルがどんなものか、また展開の方法、そして今後の方向性について書いてみたいと思います。
まず、私が水中パーソナルの可能性を見出したのは、4年前の「アクアモーション」との出会いでした。それまでドイツやスイスでの水中運動慮法の研修の中で、マクミラン法やバッドラガッツ法も学びましたが、フィットネスという現場に活かすには、なんとなく難しさを感じていたのです。「アクアモーション」は昨年のクラブパートナーでも紹介させていただいたのでここでは詳しく述べませんが、流れるようなフローリラクセーションが特徴で、基本のフローは、比較的習得しやすいものだったのです。これであれば、日本人向けにアレンジすれば可能性があると思われました。
また、立位で行う水中体操は、今の私の「水中機能改善体操」のベースとなる考え方で、グループでもパーソナルでも取り入れて行うことができると思い、まずは、20~30人くらいのグループレッスンに取り入れて行ってみました。これは、高齢者の方や膝、腰など軽い障害を抱えている人には、とても喜んでいただけるプログラムとなりました。次に、パーソナルで行うものを少しグループレッスンに取り入れる為に8人~10人くらいまでの少人数グループレッスン(有料)で行ってみました。参加者との関わりが密になることとより個別にアドバイスとアプローチができるということで、これも7年ほど続いています。
そういったクラスに参加するお客様からより個別の相談を受ける中で、パーソナルの要望をいただいたのが、私が本格的に水中パーソナルに取り組むきっかけとなりました。しかし、フィットネスクラブの中において水中パーソナルを根付かせていこうと考えたときに、手技やメソッドが難しかったり、習得に時間がかかったりするとどうしても展開が限られてしまいます。ですから、「アクアモーション」の出会いは私にとっては画期的だったのです。「アクアモーション」と「水中機能改善体操」を組み合わせることで水中パーソナルの内容が充実しました。
次に水中パーソナルを成功させるためには、プール施設の環境条件も大きく影響をします。過去にいくつかのクラブで同じように水中パーソナルを導入しても、現在もニーズが高く指導者の育成に積極的なクラブもあれば、いつのまにか立ち消えてしまったクラブもあります。指導者の力量にもよりますが、失敗する多くの場合は、クラブ側の取り組み方、姿勢が大きな要因に思われます。プールの中での経済効率はあまりよくないのが本当のところだからです。場所をとりますし、他のプログラムとの共存が難しかったり、十分な理解がされていないためにインフォメーションが弱かったり、指導者のスキルにばらつきがあったり・・・ということです。
私が、水中パーソナルを行っているクラブは、朝早く、夜遅くといったプール利用者の少ない時間、それも幼児プール(水深75cm)の空きスペースを使っています。これは、クラブにとってはまったくリスクがありません。30分を4,200円で販売しています。指導者が限られていますから、需要がすごく多いわけではありませんが、定期的に続けられている人がほとんどです。また、他のクラブでは、水中ウォーキングのコースの一部を使いながら水中ウォーキングをしている方の理解を受けながら、他のプログラムとうまく共存しています。ここのクラブでは、社員やスタッフが行っていることからお客様とのコミュニケーションがとりやすく、成功につながっていると思われます。
水中パーソナルを成功させるには、単にパーソナルトレーナーを配置すればいいという問題ではなく、環境を整え、スタッフの意識と理解を高めることが重要です。最近では、技術を取得した指導者が、水泳のプライベートレッスンに取り入れて、水泳のスキルが上がったり、グループレッスンの中にもとりいれて、お客様との信頼関係ができたりと・・・嬉しい報告を聞くことが増えました。
今後、増える高齢者や低体力者、メタボリック症候群の中高年者、整形外科的疾患を持つ人たちのニーズに応えるための水中プログラムとしてパーソナルの切り口は可能性がたくさんあります。水中パーソナルで収益を上げるというより、効果の実感が得やすいことからクラブへの信頼、帰属意識につながり、さらには口コミによる集客も見込めるわけです。フィットネスクラブが、プログラムの箱をどんどん変えて売っても、結局のところ中身が何なのか?お客さんがほしい商品、サービスがきちんと入っているのか?考えなければ、意外とお客様はよく知っているものです。新しい箱でプログラムが用意されても、中身がなかったり、稚拙だったりすると簡単に見向きもしなくなります。それを続けているとクラブに人は来なくなります。何も売ってないということがわかってしまえば、あっという間にそんな情報は広がってしまいます。
お客様が求めている商品、サービスを、心をこめて届ける1つの手立てに水中パーソナルは大きな力を発揮します。それは、「水」という不思議な空間で重力から解放され、心身ともにリラックスした状況を作り出し、指導者が導き出す動きを、水を通して間接的にお客様が感じ取るプログラムだからです。水中パーソナルの時間は、とても優しい時間が流れていきます。そういった意味では、指導者の心理状態をも水が写し取ってお客様に伝えてしまいます。形だけの指導では、お客様はサービスの質をすぐに感じ取ってしまいます。水は、熱の伝導率だけでなく気持ちの伝導率も高いのです。このことは、お客様思いのベテラン指導者の方や水を知り尽くしているキャリアのある指導者の方に活躍していただくのにはもってこいです。実際、水中パーソナルの研修に来られる方は、キャリアのある水泳指導者やアクアフィットネス指導者が多いのです。
現在、私は水中パーソナルの普及を考えて、よりわかりやすく習得できるようにフローパターンを考えています。基本のフローを習得することで、後々の研修でオプションを習得して差し込んでいくという方法です。最初から難しい手技や方法は、指導者の意欲をそぎますし、自信のないまま現場に立ってもうまく行かないことが多いからです。簡単な方法でリラックス、コンディショニング、ストレッチ、ストレングス、コーディネーションを学んで、どんどん多くの方に届けられる指導者を育成したいと思っています。