No.3 アクアエクササイズの指導って大変!?(PART2)
クラブパートナー誌 2006年3月号
先月は、アクアエクササイズの指導のコツや環境整備の改善などについて書いてみましたが、アクアインストラクターの皆さんからよく受ける質問の中で「マンネリ化」について今月は考えてみたいと思います。
「マンネリ」とは「マンネリズム」の略で一定の技法や形式を反復慣用し、固定した型にはまって独創性と新鮮さを失うようになる傾向と広辞苑では書かれています。
プログラムを考えよう!
フィットネスにおけるスタジオプログラムが非常に多様化する中で、アクアエクササイズはこの10年間くらい変わることなく「アクアダンス」「水中ウォーキング」「器具を使ったトレーニング的なエクササイズ」「スイミング」といったようなプログラムがどのクラブでもほとんどではないでしょうか?
スタジオプログラムでは、エアロビクス自体にもその年のトレンドがあり、ハイインパクトからローインパクト、複雑なコンビネーションから振り付けのようなエアロビクス、他のテイスト(ラテン、格闘技など)を取り入れたエアロビクス、さらにステップやダンベル、チューブ、ボール・・・最近では癒し系のヨガ、ピラティス、リラクセーション、カルチャー志向のプログラムと非常に多種多様に展開されています。
21世紀に入ってからのフィットネスのキーワードは「単・多・短(タンタタン)」といわれる中でスタジオプログラムは変化してきました。しかしアクアエクササイズは、多少ショートプログラム化は進んだものの多様なプログラム展開が積極的に行われてきたとはいえないと思います。確かに、バブルがはじけた平成不況の中でのアクアエクササイズの展開は、経費節約という名目で新規プログラム導入のための備品購入や研修、講習会参加費用の削減を強いられてきたということもあります。
今、フィットネスクラブで勢いのあるところは、やはりいつも新鮮味があり、お客様のニーズにいち早く応えているクラブといえます。そういったクラブでさえ、プールにおけるアクアプログラムは後まわしになっているところが多いのが現状です。私自身は、この10年くらいの間にアクアダンスや水中ウォーキングはもちろんのことミットプログラム、ジムベルといった抵抗具を使ったプログラム、太極拳のような水中リラックス体操、ヌードルを使ったエクササイズ、ボクシングなど格闘技を取り入れたプログラム、流水マシーンを使ったプログラム、機能改善を目的としたグループレッスン、有料レッスン、パーソナルトレーニング、そして最近では棒(スティック)やボールを使ったプログラムと展開を続けてきました。
このなかには、人気の変わらないプログラムもあれば、すぐに立ち消えたプログラムもあれば、徐々に集客の増えているプログラムもあります。私の感覚としては、水中でのプログラム参加の中心を担っているのは50~70代の女性それも元気な高齢者(アクティブシニア)が多いことから、体力的なことを考えれば難しいことやきついことは好みませんが、運動効果を得るためには楽しいこと、刺激的なこと、役立つこと、手の届きそうなチャレンジに対しては貪欲なような気がします。
どんどん自分のものにしては更なる進化を求めて要求度は高くなる傾向があります。「単・多・短」から「安・本・単(アンポンタン)」簡単に出来て、安心できる本物志向という傾向が強いということです。また女性特有のあきっぽさを考えると「トレンド志向」「おしゃれ感覚」こういった切り口からもアクアプログラムは、もっと進化しなければいけないように思います。
水というツールをよく知れば、プログラムは無限に生まれてくるはずです。自分のアクアプログラムにマンネリ化を感じているインストラクターの方は、まず固定観念を打ち破ってみませんか?「こんなことやってもいいのかな?」と思う前に「こんなことやってみないとわからない!」「まずはやってみよう!」という自分の意識の改革です。昨年アメリカのサンディエゴで行われたIAFC(アクア国際総会)でのアクアプログラムのバリエーションの豊かさは目を見張るものがありました。中には「?」といったものもありますが、とにかく「何でもあり!」といったところからきらりと光るプログラムに出会うのです。日本人の繊細なプログラム展開や指導力を考えれば、発想力を磨けば日本発のアクアプログラムを世界に送り出すこともできるはずです。
今の時代は、女性に受ける商品が売れるといわれています。アクアエクササイズの愛好者はまさしく女性、そして指導者も圧倒的に女性が多いのです。「女性の、女性による、女性のためのアクアエクササイズ」という観点でもっとプログラムを広げてみましょう。
クラスの演出を考えよう!
そしてもう一つのキーワードが、「団塊の世代」です。2007年度問題が取り上げられる中で、今後のフィットネスのマーケットに60代のヤングシニアがどっと押し寄せてきます。この人たちを逃さないためにも、団塊の世代層の傾向と対策を練らなければなりません。
この世代層は、「若々しく」「かっこよく」「おしゃれに」元気よく年を重ねていきたい人たちです。そのためには、指導者の皆さんも「若々しく」「かっこよく」「おしゃれに」現場に立たなければいけません。指導するときのウエアや音楽の選曲、体型や姿勢、表情や動き方・・・こんなところをお客様はよくチェックされています。インストラクターの立ち居振る舞いに自分を重ねようとしています。そして個性的なこと、ちょっと他にはないもの、特別なことに時間とお金をかけてくれます。
プログラムがいつもワンパターンだとすぐに飽きられますし、工夫がないと嫌がられてしまいます。ちょっとやっかいかもしれませんが、もしかすると今までのアクアインストラクターに一番欠けていたことを要求されているのかもしれません。私は、アクアを指導するインストラクターの人には、もっと自分に合ったかっこいいウエアの着こなし、季節感のあふれる音楽やプログラムに応じた音楽の選曲、参加者を魅了するムーブメントや表情をきちんと演出できるようになってほしいといつも思います。インストラクターの皆さんはとにかく一生懸命で汗だくになって、大声を張り上げて余裕がなくなっていることが多いのです。そのため、参加者とやり取りする余裕がなくなったり、参加者の要望や気持ちを感じ取ることも出来なくなったりしてしまう場合が多いのです。
動きを提供することだけにとらわれず、インストラクター自身がデッキに立っていることの心地よさ、クラス全体とやり取りする楽しさを優先してみましょう。まずは、自分の出来るクラス演出を明日からいえ今日からでも始めてみませんか?
結局、マンネリ化はお客様がそう感じるよりもインストラクター自身が無意識のうちにパターン化してしまったレッスンを提供してしまい、それを断ち切る勇気を失ったところから始まるのだと思います。
「さぁ!まずはやってみよう!」と腰を上げてくださいね。