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No.5 インストラクターの将来性No.2

クラブパートナー誌 2006年5月号掲載

*インストラクターとして何がしたい?

先月に引き続き、インストラクターとしてのキャリアアップの具体的な方法を今月は考えてみましょう。それでは、まず自分に聞いてください。「10年後自分は何がしたい?」では、そのために「5年後は、どういうポジションでいたいか?何をチャレンジしているか?」「そのためにこの1年間自分はインストラクターとして何が出来るのか?」といった風に具体的なキャリアビジョンを組み立ててみましょう。その中で、インストラクターとしてさらに専門性を極めたスペシャリストを目指すのか、さまざまな経験、ポジション、役割を通してゼネラリストを目指したいのかも考えてみましょう。

まず、インストラクターとしてより専門性を極めたスペシャリストを目指すのであれば、インストラクターとして必要な知識、スキルの取得、それを伝えていくプレゼンテーション、参加者との関係作りのためのコミュニケーションスキルが必要になります。他のインストラクターにはないオリジナリティ(独創性)や面白みも必要です。より高い専門性を求められる場合、当然他のインストラクター以上の知識やスキルは高くなければなりません。

また、多方面に才能や能力を発揮したゼネラリストを目指すのであれば、自分の核となるもの、たとえば水泳指導、フィットネスインストラクターの育成などを中心にそれに関わる業務や役割を増やしていきます。

私の場合はどちらかというと後者になるかと思いますが、もともとはエアロビクスなどスタジオプログラムの指導が中心でした。本当にちょっとしたきっかけでエアロビクスの指導者養成に関わることになってから、スタジオプログラムの管理、インストラクター評価、イベントや新規プログラムの企画と実行、そして営業へという仕事が増えていきました。業務が増えるにしたがって求められる役割や結果も変わってきます。このときに自分に一番欠けていたのが、ヒューマンスキルといわれるコンサルティング、コミュニケーション、リーダーシップ、カウンセリング、ネゴシエーション(交渉)能力です。対人関係をうまく作れず、失敗した経験があります。さらに、その後フィットネスクラブのスパーバイザーというポジションにおいては管理職の役割が加わってきました。現場中心に活動していた自分に身につける必要に迫られたのがコンセプチュアルスキルです。現在のように世の中が複雑になって、何がいいのか、何が必要なのか多くの情報があふれる中、的確に物事を捉えていく能力が必要になります。状況を把握し分析する能力、問題を発見し解決する能力、想像力と企画力を発揮して戦略を立案する能力が求められるのです。こうして自分自身の会社の設立、NPOの立ち上げを行うことができました。

 

*目指せ!スペシャリスト!

それでは、今月はスペシャリストになるためにどのようにキャリアアップすればいいのか考えてみましょう。まず、皆さんの指導は何でしょうか?指導経験はどれくらいですか?自分の指導を誰かに評価してもらっていますか?そのために何か努力をしていますか?・・・とこのように質問をしてみましたが、今の自分のスキルや状況を客観的に把握してみましょう。

まず、お客様に絶大なる評価を得るために(ちょっと大げさですが・・・)自分の強みと弱みを考えてみましょう。次に強みの部分をさらに極めていくために何をすればいいか、何が出来るか考えてみましょう。たとえば、コミュニケーションが自分は取れていると思っているインストラクターの方は、自分のクラスのお客様の何人と実際に言葉を交わし、目を合わせたのか。さらにまったく言葉も交わさず、目を合わせることもなかった人はどれくらいいたのか。また別の観点で自分が言葉を投げかけただけではなく、お客様の話をどれくらい聞けたのか、その話をどのように受け止めたのか。と考えていくと私自身も60人くらいのクラスの中で全員が見えてはいるものの11人と目を合わせきれていなかったり、的確なフィードバックができていないと思うことがあります。

また、プログラムをいつも工夫していることが強みのインストラクターの方は、そのプログラムがお客様に合っているのか、意図が伝わっているのか考えてみましょう。たとえばエアロビクス(アクアダンスなどもそうですが)の場合、音楽に合わせたコリオグラフィー(振り付け)を一生懸命考えます。そのときに何を目的としてそのプログラムを作成していますか?運動強度?動きのバランス?とにかく目新しさ?どうでしょうか。どれも大事ですが、お客様のニーズに合ったコリオグラフィーの展開がなされないと一人よがりになってしまいます。複数のクラスを持っていると同じコリオグラフィーでも喜んでくださる場合もあればその逆もあります。また、コリオグラフィーが失敗したときは、多くの場合インストラクターの意図が伝わっていないことが多いものです。動きの形ばかりを伝えようとしていたり、強引に展開をしていたりとお客様との関係作りがコリオグラフィーを通して成立していないのです。どんなにすばらしいコリオグラフィーであってもそれをお客様にわかりやすく、無理がなく、でも少しずつチャレンジできるような展開になっていたらレッスンはいきいきとしたものになります。そのためにも、①お客様のニーズを知る、②自分のレッスンの評価を受ける、③評価の結果に対して、課題を見出す、③課題に対して出来うることを考え実行する。と考えていくと強みと思われる部分をまだまだ磨くことができるのです。自分自身で課題を見出すことが出来た人が、キャリアアップのまず第一歩です。

インストラクターとして専門性を磨くということは、その専門分野に関しての信頼を得なければなりません。信頼を得るためには、安心・安全・納得・興味・そして年月・・・つまり付け焼刃では無理ということです。最近のお客様の目は肥えてきています。フィットネスクラブもスイミングスクールもたくさんありますから見比べますし、TVやマスコミなどからたくさんの情報を得ています。「本物志向」になっているのです。こういった時代に専門性を磨くことは1つの武器になります。

最後にフィットネス業界では、専門性を磨くための研修や講習会があちらこちらで開催されていますが、とかく参加者の顔ぶれがいつも決まりがちです。学ぶ人はどんどん学びますし、ステップアップしていきますが、ずっと変わらないインストラクターの方もいらっしゃいます。自分を知ること、見つめることを忘れてしまうと何も気づかないままです。スペシャリストを目指す人は、少し立ち止まって自分や周りに目をとめてみましょう。そして次にとるべき自分の行動を考えていけばいいのです。私自身は、講習会などを通して参加者の方の熱意や意欲に、いつもエネルギーをいただくことばかりです。願わくば、そういったインストラクターの方が1人でも増えていきますように・・・