No.6 インストラクターの将来性(ゼネラリストへの道)
クラブパートナー誌 2006年6月号掲載
*キャリアを積んで、チャンスを活かせ!
「成功するステップアップ」ということで先月は「スペシャリスト」としての活動にスポットをあててみましたが、今月は「インストラクター」という立場から「マネージャー」「ディレクター」などフィットネスのさまざまな場面で多角的に活動するような「ゼネラリスト」へのステップアップを考えてみたいと思います。
といっても、ゼネラリストとして活動することはなかなか自分の努力だけでは難しいものです。インストラクターとしての自分の努力が養成コースや講習会の講師、プログラム開発ディレクター、クラブのマネジャーなどとして報われるためには、やはり自分の努力を活かすチャンスが訪れるのか、そのチャンスをモノにできるのか・・・といったことに恵まれないと難しいものです。そのためには多くの人脈やさまざまなフィールドでの活動と実績が必要になります。
インストラクターという立場で仕事をしていると、とかくお客様、クラブ(仕事先)のスタッフ、同じインストラクター仲間といった人間関係に限られてしまいがちです。限られた場所、人間関係、情報、知識、スキルだけでは、チャンスも限られてきます。
私自身を振り返ってみると、20代のときに演劇をしていたこと、バレエやダンスをしていたこと、ありとあらゆるバイトの経験をしたことがいろいろな人と出会う機会を得ることになりました。考えてみると「エアロビクス」や「アクアエクササイズ」を広げていくきっかけは、そんな人間関係の中から広がったことが多いような気がします。私の場合は、25歳まで演劇とインストラクターという2足のわらじ生活から、インストラクター1本で専門的に活動しようと思っていた頃、仲間のインストラクターが教えてくれた1つの募集広告が大きな転機となりました。
インストラクター募集と思って訪れた会社でしたが、マネージャー募集ということで、結局その場では演劇の経験やインストラクターとしての夢、将来を語って、「次のインストラクター募集のときにまたお願いします」といって場を去りました。翌日、その会社から再度呼び出されて、インストラクターとして採用されるかと思い喜んで出かけたところが、結局マネージャーとして勤務することを説得されてしまったのです。
マネージャー経験などこれっぽっちもないわけですから当時25歳だった私は単に怖いもの知らず、レッスンを担当してもいいという条件だけで「まあ、いいか・・・何とかなるかな?」といった甘い考えでマネージャーを引き受けてしまったのです。東京から大阪へ居を移し、東京と大阪のエアロビクスレッスンの違いに戸惑ってレッスン指導も大変なところに、さらに慣れないフロント業務に経理業務、毎月の予算や収支の報告、イベントの企画や実施・・・とにかく今までやったこともない業務がどっと押し寄せ1年間くらいはOffもなかったような気がします。
ただ、今思えばこの当時の経験が私にとっては、その後の自分に大きな影響を与えてくれたことは確かです。もし、私がスペシャリストを目指していたなら最初からこのチャンスは活かさなかったと思います。たぶん、いろいろなことをやってみたいという気持ちがどこかに存在したことが、さまざまなキャリアを積むきっかけになったと思います。
*人脈を広げ、活動の場を増やそう!
インストラクターの立場で活動する皆さんの中には、フリーで活動される方もいれば、社員や契約社員として働いている方もいると思います。特に、社員や契約社員の方は、インストラクター業務だけでなく管理業務やその他会社から求められる業務内容が多岐にわたっているのではないでしょうか?中には、インストラクターとしてスペシャリストを目指して退社をしてフリーになられる方も多いと聞きますが、また逆にフリーとして活動する方で社員として雇用されることを望む方もいます。
多くのクラブでは、昨今単にインストラクター業務を行うだけでは、社員として雇用されることは難しくなっています。インストラクターとして培った経験や目線を会社の利益(営業、開発、企画、運営など)にどのように活かすことができるのかというはっきりとしたビジョンや手法を持つ人材が求められているからです。
しかし、ここ数年どこのクラブも慢性的な人材不足です。特にキャリアを積んだインストラクターとしてのスペシャリストもですが、とくに多角的に仕事ができる人が少ないと聞いています。そのため、社員1人にかかる業務量は多くなりますし、個人の適正に関係なく十分な育成がされないまま現場に立つことにもなっているようです。人がキャリアアップしていく過程において、本人の目標と能力に見合ったステップアップができればいいのですが、現実問題として難しいようです。その狭間に落ちいったときに、期待できる人材のドロップアウトも起こってくるのです。
ゼネラリストを育てるためには、インストラクター自身の努力もさることながらそれを受け入れるクラブや団体、周りの環境がどのように整うかはとても大きな鍵といえます。でも、人材不足の今だからこそステップアップを狙っているインストラクターにとっては、チャンスともいえます。まずは、自分自身がどういった仕事や立場に興味があるのか、そのためにはどういった能力(知識、スキル)が必要なのか考えてみましょう。付け焼刃で得た知識や情報を羅列するのではなく、自分の経験や考え・思いをアプローチするクラブにどのようなメリットがもたらせられるのか考えることです。
スペシャリストがお客様の満足を得ることがクラブの満足につながるという切り口なら、ゼネラリストはクラブの満足がインストラクターとお客様の満足につながっていくという視点に立つということでしょうか?
ということで優秀な人材確保に積極的なフィットネスクラブも最近では出てきています。ヘッドハンティングやクラブ内でのキャリアアップのためのアドバイザー試験などが開催されているところもあります。そういったチャンスを活かすのもゼネラリストへの第一歩です。
そういったところでは、多くの場合ステップアップのシステムがあり、OJTが充実していたり、さらにキャリアに見合った研修の場も提供してくれることがあります。また、大きなフィットネスフォーラムや協会、団体などがオリジナルプログラムの発表やプレゼンテータとして公募する機会もあるようです。自分のプログラムをどんどん応募してみる方法も1つです。
さらに、私の周りではフィットネス以外の業界との連携、例えば、医療はもちろん学校、さまざまな地域活動団体、福祉関係などとフィットネスをつなげるような活動を始めている人もいます。さらに、自分自身でスタジオや小さなフィットネスクラブを開設する人もいます。このように前向きにどんどん仕事の幅を広げていく人のそばにいることも、自分にチャンスが回ってくる可能性も高いですし、何よりもたくさんの刺激を受けます。今いるステージから少し大きなステージにキャリアアップを考えている人は、まず自分の周りを見回してそういった人がいないか探してみましょう。自分に刺激を与えてくれる人をどんどん自分の人脈リストに加えて、活動の場を広げていくことがまず大事です。自分から歩き出さなければ何も変わらないのです。