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No.8 ドイツ研修ツアーレポートVol.2 ~ドイツクアオルトにみる健康づくりとは~

クラブパートナー誌 2006年8月号掲載

今月も引き続きドイツ研修ツアーのレポートをしたいと思います。前号では、フライブルク大学での体験が少しアカデミックだったので、今月は日本のフィットネスクラブにも積極的に取り入れると面白いと思われる内容をレポートしたいと思います。

すでに日本でもさまざまな取り組みをされているクラブもあるかと思いますが、ドイツのクアオルトでの健康づくりメニューは、運動を楽しみながら、自然と関わり、人と関わってさまざまな体験を重ねていくものがたくさんあります。その背景には、健康に対する意識改革、運動への動機付けのためのプログラムがしっかり組み込まれているのです。

私が、特によかったと感じたものはアウトドアエクササイズでした。

 

*自然と身体が調和するノルディックウォーキング

両手にストックを持って行うウォーキングがノルディックウォーキングです。ドイツではノルディックウォーキングはとてもポピュラーで、今回は理学療法士のトーマ先生について、ストックの調節の仕方、握り方、基本的な歩行の指導を受け練習を開始しました。意外と簡単そうに見えていたのが、実際にやってみると参加者はなんば歩き(同側手足歩行)になる方が多く、大笑いではじまり、参加者一同四苦八苦で何とかウォーキングが様になったという感じです。

ストックをしっかり握って少し後方に押し出すようにしながら歩くと腕の後ろ側(上腕三頭筋)を使うことができます。そのため自然と背筋が伸びて胸を張ったような歩き方になるのです。この、ノルディックウォーキングはストックをつきながらの歩行なので、足への負担、関節への負担が少ないということでしたが、実際に本当に下肢には優しく感じられました。練習を終えたところで、早速、ライン川沿いを1時間弱ウォーキングしました。時節、ストレッチを入れたり、歩き方に少し変化を加えて行うことで、メリハリがつき、緑の自然の中を歩く気持ちよさは本当に格別でした。都会のフィットネスクラブでは、排気ガスや騒音という中でウォーキングする気にはなかなかなれないものです。運動を心地よく行うためのロケーションは重要だと思いました。

 

*森林の中でオゾンたっぷりのヨガ

今回、私たちがドイツに着いてからはとてもいいお天気に恵まれました。それまでは、ワールドカップのニュースでもご存知のように雪や雹が降っていたり、セーターがいるほどの肌寒いお天気が続いていたのですが、一気に初夏を迎えたようなお天気に恵まれ続けたのです。そのおかげで、ドイツならではのクアパーク(屋外)の森の中で「ハタヨガ」のレッスンを体験できることになったのです。

クアパークの中の木々に囲まれて、葉の間からこぼれる光を身体に浴びながら、ゆったりとヨガのエクササイズを体験したことで、ヨガ本来の自然との対話につながる感覚がなんともいえない不思議な気持ちにさせてくれたのです。日本のフィットネスクラブの閉ざされたスタジオの中で行うヨガとは、まったく心と身体に感じるエネルギーが違うようでした。レッスン環境が心と身体に及ぼす影響は本当に大きいと感じました。

日本のヨガブームと同じくドイツでもここ数年ヨガのブームはかなりのようです。6年前にドイツに来たときは、まだまだヨガは、フィットネスクラブなどでカルチャーレッスンの一部で行われていただけでしたが、ここ数年でクアオルトの中でもグループ運動療法の1つに取り入れられるようになったそうです。ちなみに日本で大ブームとなっている「ホットヨガ」について聞いてみましたが、まだドイツではそういったプログラムはポピュラーではないようでした。

 

*極楽気分のパッシブプログラム♨

次にドイツのクアオルトというとやはり個別(パーソナル)メニューとサウナのバリエーションの豊富さに驚かされます。個人の目的や症状、体力レベルなどに応じてさまざまなプログラムが用意されています。

シュリンゲンティッシュ、マッサージ、ブラシマッサージ(裸で行う)にアーユルヴェーダを今回は体験しました。過去のドイツ研修においては、リンパドレナージやアロマオイルマッサージ、泥のマッサージなど数々のプログラムを体験していますが、私のオススメは、シュリンゲンティッシュです。これは特殊な機械を使いますが、身体の各部分を紐で吊り下げて、可動性や安定性を引き出すような手技、マッサージを施すのです。つまり陸上にいながら水中でぷかぷか浮いているような状態を作ってさまざまな手技を施すものです。

今回は、五十肩の参加者の方が、シュリンゲンティッシュを行った後、上がらなかった左手がすんなり上がるようになってとても喜んでいました。その方は、日本に戻ってしばらく滞っていたトレーニングをまた一からきちんと行いたいというプラスのモチベーションに変わっていました。このときに私が思ったことは、指導者の使命というのは、参加者が運動を通して次へのステップアップやチャレンジを引き出すために何をすべきか考えることにあり、そのためにも、参加者の身体と心の状態をしっかりと捉え、的確なアドバイスができること、運動指導ができることが重要であると感じたのです。場合によっては運動よりも治療を優先するようアドバイスをし、治療の現場からしっかりと運動を行うフィットネスの現場への引き渡しがもっと出来たならば・・・と。今回の五十肩のように治療と運動がつながっていくことがこれからのフィットネスの中で確実に求められる形ではないでしょうか?

この思いにとらわれるばかりでした。

 

*日本のサウナと大違い!

ドイツのクアのサウナは、ほとんど男女混浴になっています。読者の中では、驚かれる方とニヤニヤされる方がいらっしゃるかもしれませんが、ドイツ人のサウナの利用はとてもマナーがよくびっくりしてしまいます。サウナ発祥はヨーロッパということを考えると、当然かもしれませんが日本人ももっと見習うべきだとつくづく感じてしまいました。そのためにはサウナ利用のための教育がもっと必要です。バッドベリンゲンのバリアテルメも充実した施設ですが、そこには、60℃~90℃のドライサウナ(3つ)やミストサウナ、21℃のプール、40℃のお風呂、足湯、アウフグースなどさまざまなプログラムが用意されています。各自が自分の目的に応じて選択するのですが、サウナの中ではバスタオルをきちんと敷き、その上に身体を置き、汗が床に落ちないような配慮をします。サウナの中では、静かに時間が流れるのを待ちます。日本のフィットネスクラブの井戸端会議状態のサウナとは大違いです。さらにサウナの中には、気持ちのよい空間作りとして、ガラスを大きくとって自然光をふんだんに取り入れたサンルーフデッキがあり、身体と心を芯からほぐして、リラックスさせてくれます。サウナから直接外に出て芝生の上で日光浴をする人(当然裸です)、サウナで身体を横たえる人、サンデッキで仮眠を取る人、21℃のプールで気持ちよく泳ぐ人(これも当然裸です)などそれぞれのリラックスの仕方をしています。私も6年前にサウナを初体験したときは、どぎまぎしたものですが、もうすっかり慣れたもので今年はアウフグース(熱波浴)も心地よく楽しむことが出来ました。

 

*グループレッスンの意味

最後に今年はドイツでツアー参加者に向けたレッスンも行ってきました。

ドイツツアー6回にして初めて私のレッスンをプログラムの中に取り入れてもらいました。ツアー参加者はエアロビクスに慣れている人もいましたが、苦手意識を持っている人もいたので簡単なラテンダンスのステップを組み合わせて1人⇒二人組み⇒全員(グループフォーメーションダンス)へ変化させながら展開をしてみました。

エアロビクスなど従来スタジオで行われているプログラムは、ヨーロッパ的な感覚で言うとグループレッスンではないようです。大勢で行っているものの、全員が鏡を見ながら個人のエクササイズを行っているのです。そこには、エクササイズを通して人と人が関わりあうようなコミュニケーションがあまり存在していないのです。運動療法をグループワークで進めていくときには、指導者と参加者、参加者と参加者が関わりあうことがとても重要と言われるのですが、私は常々レッスン指導の中で人と人との関わり合いを大切にしたいと思っていました。

そうは言ってもなかなかフィットネスクラブの既存のプログラムの中では難しさがありますが、私が行う機能改善教室では本当の意味でのグループレッスンが行われていると自負しています。参加者からも今回のグループエクササイズは、ペアで踊ったり、列になってランバダを踊ったり、最後は思いっきりサンバで参加者同士が触れ合ったり、笑顔やウィンク、投げキッスをしてたくさんの関わり合いを作ってみました。12人の参加者が大いに笑い、自然体になれた姿が本当に印象的でした。

高齢者指導や機能改善指導を考えるときには、こういった精神面と社会面へもアプローチしていくことは今後とても重要ではないかと感じています。

 

2ヶ月にわたってとっても個人的な観点からドイツレポートをさせていただきましたがいかがでしたか?ぜひ、読者の皆様のご意見もお聞きしたいところです。来年は、9月にドイツツアーを予定しています。興味のある方は、ぜひご一緒しましょう。