CONTACT このページのトップへ Twitter Facebook Instagram Ameba

No.11 インストラクターの健康管理~休養=心と身体のリセット~

クラブパートナー誌 2006年11月掲載

 毎日のレッスンが続く中で、インストラクターとしての身体のケアを怠っていると怪我や病気につながったり、時には精神面でのバーンアウトが起こってしまうことがあります。とかく、インストラクターの方はまじめに一生懸命にレッスンや仕事に取り組みすぎて、のめりこんでしまった結果健康を損ねてしまうようです。

また、身体に対してトレーニングや食事の面でのコントロールができても意外と仕事とプライベートの時間をうまく切り替えができない人やリセットできない方も多いような気がします。読者の皆さんはどのように身体と心の休養を考えていますか?私自身のことを言ってしまうと正直なところ月に1回もOFFをとっていないことがほとんどで、完全に仕事をしないOFF日は年に1週間もあるかな?という感じなので今回のような原稿を書く資格はありません。ただ、若いときに比べてOFF日がなくても身体も心もそんなに疲れた感じがしないのは、単に休養を時間=量としてとるのではなく、休養の考え方、方法、内容=質を高めていることで、時間効率や切り替えがうまくなっていることが疲れない原因のように感じます。

実際のところ、仕事を休んで家にいると家で溜まった家事一切がのしかかってきて、かえって疲れてしまったり(笑)、気持ちの緩みから体調を崩したりすることがあります。ということで、私の休養というより身体と心のリセットは、出張に行って、知らない土地での新しい人との出会い、その土地の食材との出会い、車窓から見るわくわくするような景色ということになるのでしょうか?出張に行くときは、移動時間は特に大事なくつろぎタイムとなります。電車に揺られながら、本を読んだり、いろんな夢に思いをはせたり、睡眠不足を補ったりと・・・ということで私のことはさておき、身体と心のリセットということを書いてきましたが、ここでいう「リセット」とは何かを考えてみたいと思います。

 私の考えるリセットとは次のように考えています。やはり日々のレッスンや仕事の中でいろんなストレスを受け、多少なりとも身体や心が疲れて傷ついていることがあります。それを「0」に戻すことはできなくても、傷ついた部分を癒して少し以前よりは強くたくましくなったところをまた起点に切り替えてスタートをすることと思っています。そのためには少し癒す時間が必要になります。筋肉の場合は、肥大させたり、筋力アップをするときに多少なりとも筋繊維が傷ついてその筋繊維の回復の中で以前より筋繊維が強くなっていきますが、筋線維の回復は48時間かかるといわれます。でも精神面での疲労はなかなか簡単にはいかないことが多く、時間がかかることが普通です。それでも子供の頃や若い頃は、些細なことで傷ついて萎えてしまった気持ちも経験を繰り返し、年を重ねるごとに対応力や適応力がついてきます。

結局のところ怖がって何もしなければどんどんひ弱になっていくわけですから、仕事のストレスやレッスンの疲れを回復する中で、インストラクターとしてのキャリアが培われ、心身ともにたくましくなっていくことになります。ただ、ストレスの感じ方は、人によって違うものです。自分にとってはどうってことないことが、他の人には耐え難いものであったり、レッスンを週に20本を悠々とこなせる人もいれば、10本でも疲れてしまう人もいます。要は、休養のとり方にも個別性や全面性などトレーニングの原則があてはまるような気がします。

 身体と心のバランスやリセットは、人それぞれいろんな考え方や方法があります。自分にあった休養方法が見つかるといいのですが・・・私はここのところよく受ける相談としては、将来への不安や年齢とともに衰えてくる体力、仕事と家庭の両立、仕事における人間関係などが、日々のレッスン業務の身体的な疲れより精神的な不安や葛藤による心の疲れを訴えている人が多いのも気になります。以前であれば、先輩や仲間のインストラクターとご飯を食べたり、お酒を飲んで憂さを晴らしたり、愚痴を聞いてもらったりと人間関係のストレスは、人とのかかわりの中で癒されたものですが、最近はみんなが忙しくなりすぎているのか、相談する人も時間もなく、結局誰にも相談できないまま問題が大きくなっていることも多いのではないかと思います。

 そして世間一般も同じような社会構造だと思います。そんな世知辛い世の中であるからこそフィットネスクラブには多くのお客様が健康や仲間や生きがい、楽しさを求めてやってくるのです。私たち指導者の役割は大きいと思いませんか?フィットネス業界の中で、実は一番前線で活躍しているインストラクターが疲れていたりクラブスタッフがやる気を失せていたのでは、多くの人の癒しの場、活力の場を提供することができません。思い切って何かを少し失ってでも上手に休養をとる方法を身につけましょう。

 休日をうまく利用して心身ともにリフレッシュする方法として、皆さんがよく行う方法は何でしょうか?旅行、食べ歩き、ショッピング・・・普段とは違う生活や環境に触れることもいい方法です。

でも人間関係がストレスの原因となっている場合は、それでも癒されないことが多いのではないでしょうか?ここでいう人間関係は必ず皆さんにストレスを与える人がいるわけです。その人がいなくなれば・・・その人が変わってくれたなら・・・と思いをめぐらしても何の解決にもなりません。結局のところその人との関わり方や付き合い方、またその人に対しての視点を変えてみることでしか解決の糸口は見出せないことがほとんどです。相手の立場になって考えてみる、自分と置き換えて考えてみる、客観的に事実を順番に拾い上げてみる、そういった心の中の状態、状況を整理してみることが必要です。そうした上で、なるべくなら相手と対話を試みてみることも大切です。相手のことをもっと知ってみる、相手の意図を聞いてみる、そして相手を理解することで自分の感情はどうなのか改めて考えてみることが必要かもしれません。相手にアプローチすることはとても勇気のいることです。でもその勇気を持つことで、意外と自分の心が癒されることがあります。私の経験でもそのようなことが何度かありました。そうして関わった人とは、実はずっと長いお付き合いになっていたりもします。「昨日の敵は今日の友」ということでしょうか?

ストレスの回避のためには、①状況が変わる、②相手が変わる、③自分が変わるとするならば、「③自分が変わる」のが一番早い方法だということです。

 皆さんは、どう思われますか?

 

追記

 私のフィットネス活動の中には、インストラクターの育成、養成という業務がありますが、今までは研修会やセミナーを通してのアプローチのみに終わってしまっていたのが反省材料です。今後は、単に知識や情報のみをアウトプットするのではなく、1人1人の考え、想い、夢などを語り合えるような場作りが今こそ大事だと感じています。来春には、私の地元である大阪、堺市にそんなスペースを作ることを企画しています。読者の皆さんにも是非一度ひょっこり遊びに来ていただきたいと思っています。詳細は、また紙面でご紹介します!