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No.12 行く年2006年を回想

クラブパートナー誌 2006年12月掲載

今年も残すところあとわずかとなってしまいました。読者の皆さんにとっては、2006年はどんな1年でしたか?年齢とともに年々忙しくなってくるのは、私だけでなくフィットネス関係者の中堅どころからベテラン域の方はみなさん同じようです。世間では、人材不足であるとか人材空洞化などという文字がマスコミを飛び交っていますが、フィットネス業界も人材不足は深刻な問題になりつつあるようです。来年は、2007年度問題を控えながらどこのフィットネスクラブもプログラム開発、人材確保に躍起になるもののなかなか根本的な解決は見出せないジレンマに陥っているようです。

さて、そんな忙しいフィットネス業界は、今年も新規出店クラブが目白押し!特に首都圏、近畿圏、中部圏など都市型地域には各駅ごとにフィットネスクラブができるのでは?と思わせるような勢いです。

そんな中で、11月いっぱいで閉店をするフィットネスクラブがあります。半年前まで私はそのクラブでレギュラーレッスンを担当していました。このクラブの近隣には、大手のフィットネスクラブが2店も取り巻いており、経営的にはかなり厳しい状況が続いていたのですが、会費を見直したり、他クラブにはないプログラムを導入したり、高齢者の方には居心地のよいクラブとしてスタッフも温かい人たちが、何とかクラブを支えていたのですが、とうとう閉店ということになってしまいました。私は、このクラブが大好きでした。ちょっと下町の雰囲気があり、会員の方がとても日常的にクラブを利用され、コミュニティの強いクラブだったように感じます。

会員の平均年齢は他クラブに比べるとやや高かったかと思います。年金生活の方も多く、その生活費の一部を健康維持のために費やし、一生懸命運動に取り組んでいた姿を思うと、12月以降の会員の方の居場所はどこになるのだろう?と切ない気持ちになってきます。若い方や生活に余裕がある方なら新しいクラブに通えばいいのですが、高齢者の方々でコミュニティが出来上がったクラブで生活の一部を担っていた方にとっては、新しいクラブの会費、システム、プログラム、人間関係どれもがストレスとなってきます。このことで体調を崩さないだろうかと心配してみたり、このまま運動をやめてしまうのではないかと思ってみたり・・・何かサポートできることはないのだろうかと考えてみたり・・・今まで運動の大切さを伝え続けて頑張ってきたインストラクターや、その指導のもとに一生懸命取り組んで残りの人生はこのクラブとともに・・・と思いを抱いてきた会員の人たちのことを思うとなんともやるせない気持ちになってしまいます。

クラブを閉店する会社側も大きな決断だったと思います。私が思うに、確かにマーケットとして魅力のある地域にはフィットネスクラブが集中し、そのことでサービス力が高まり、お客様にとってはプラスの還元が得られるかと思います。が、一方で会員の取り合いやマーケットのつぶし合いになっては、どちらのクラブも大変になってしまいます。逆に少し人口の少ない地域に行くと運動施設が身近になく、専門スタッフや指導員もいないということで、十分な運動指導を得られていない現状もあります。60歳以上の高齢者が多いクラブに対しては、自治体や国からの援助や助成は得られないのかとつい思ってしまいます。会員個人が払う会費は安く抑えたいものの、でも高齢者が多い分だけ人手もかかりますし、クラブの設備もお金がかかってきます。結局、民間の大手スポーツクラブは、高齢者の取り込みといっても元気な生活にゆとりのある高齢者にしか門を開くことはできませんし、最近の傾向ではプール施設のないクラブやサーキットプログラムなど若い人をターゲットにした施設が増え、地域に根ざしたクラブは、経営が厳しくなる一方のようです。

 どれもアメリカ志向のクラブ経営のような気がしますが、アメリカと日本ではフィットネス事情がまったく違います。日本人にあったフィットネスクラブの取り組みをもっと業界全体でなすべきではないかと思います。アメリカでのフィットネス事情は完全に「肥満対策」です。日本の場合は、それよりも「高齢者対策」が大きな問題です。事情が違うのにフィットネスクラブの経営や展開がアメリカ寄りなのは私にはちょっと理解ができないところです。日本の場合は、むしろ肥満も問題ですが、若い人の体力不足、やせの問題も大きいと思うのです。

私は、毎年ドイツに行く中で今日本のフィットネスクラブに足りないものがドイツのクアオルトにはあると思っています。しかし、ドイツもクアオルトの経営も決して好いわけではなく、年々厳しくなっていると言われます。そこにはドイツの医療改革(クアオルトの保険適用がきびしくなってきた)が背景にあるのですが、それでもプログラムやシステムは習うことがいっぱいあると思います。

これからの、日本のフィットネスクラブのあり方として、高齢者の方に向けたやさしいクラブ作り、そこには人材教育、プログラム開発、施設環境の充実が必要でしょうし、若い人たちの体力づくりと健康に対する意識改革と教育が早急に必要だと思っています。そのためには、フィットネス業界に身をおくインストラクター、トレーナー、コーチといわれる現場最前線の人たちのスキルアップが必要不可欠です。フィットネスクラブを経営するオーナーの方やマネージャーの方にその意識がどれほどあるのか・・・ともすれば日々のルーティン業務をこなすことが精一杯で、今後の展開を見据えた人員確保や、人材配置、人材教育が後ろ手に回っているように感じます。

また、現場のインストラクターにおいても日々の業務に疲労困憊し、自分の仕事に夢を抱いたり、キャリアアップを考えてみたり、仕事に意味を見出せなくなっている人も多いような気がします。

そんな中で、先の閉鎖するクラブでレッスンを担当していたあるインストラクターが、閉店するクラブの近くに場所を借りて、高齢者対応のレッスンができるようなサークルを立ち上げることになりました。私は、彼女からの相談を受けたときに、お金ではなく、自分の地位や名誉でもなく純粋に今まで一緒に運動に取り組んできた参加者たちの目線で、どうすればこれからも気持ちよく楽しく運動ができるのか考えている姿勢になんともいえない気持ちになりました。とともにいろんな意味で彼女が始めようとする活動をサポートしたいとも思いました。

このように、1人のインストラクターの思いが、いろんなアイデアを生み出し、行動へと導いていく・・・こういった志を持っているインストラクターは日本中にまだまだたくさんいるような気がします。彼女のような思いでサークルを立ち上げている人たちが、さらに年齢を重ねても安心してインストラクター業を続けていけるような社会システムがそろそろできてもいいとも思います。

インストラクターが一人でなにもかも背負ってしまうのは負担が大きすぎます。同じ志を持つ仲間を探し、多くの情報を共有し、大きなウエイブとなることを考えたいと思います。読者の皆さんも是非、お知恵をお貸しください。

 私にとっては、2006年はフィットネスが新しい時代に入ったという一言に尽きます。つまり、これからのフィットネス業界をリードしていくのは、フィットネスクラブではなく、インストラクター11人の意識と行動ということです。来年は、さらにそれがもっと明確になるような気がして今からワクワクしています。2007年もますます頑張らねば!!