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No.17 アクアエクササイズの基礎技術の習得~姿勢が大事~

クラブパートナー誌 2007年5月掲載

「アクアエクササイズの指導って大変!」というのは、以前この紙面をお借りして書かせていただいたことがありますが、読者の皆さんもそう思われますか?私の周りでアクアの指導の大変さは、特に体力的なことを言うインストラクターが多いようです。当然、高温多湿な環境の中で動き続けるのは大変です。 脱水症状になったり、水中での動きの模倣動作をしようとすると、身体のコントロール力が要求されますから筋力、持久力、バランス力がないと疲労するどころか、自分の身体への負担が大きく怪我にもつながりかねません。また、指導スキルが乏しいとどうしても動き続けてしまうことも問題です。私自身も過去に何度か「アクアの指導はしんどいなぁ~」と思ったことがあります。また、レッスンの途中で足がつったり、元気いっぱい頑張りすぎて転んでしまったこともあります。アクアのインストラクターは、苛酷な環境の中で頑張っているので、スタジオレッスンよりもフィーをあげてほしいなぁと思ったことも・・・

 そんな私が、40代後半になってまだアクア指導を続けられる、むしろ30代より楽にアクアの指導ができるようになったのは、1つは自分の身体のトレーニングとして「ジャイロトニック」「ピラティス」をするようになってから、次にレッスンの目的がコリオグラフィーを伝えることより、身体の動かし方や使い方など参加者へのアプローチを多くしてからです。そのことで参加者からは「先生一段と若返った」「いつもエネルギッシュで見ていても気持ちがいい」「やる気が出る、思わず動いてしまう」と嬉しい言葉を頂くようになりました。ということで、今月から、インストラクターが気持ちよく、無理なくデモンストレーションするための基礎技術の習得方法について書いてみようと思います。ということで、今月は「姿勢」がテーマです。

姿勢教育

 なんでもそうですが、基本となる姿勢ができていないと説得力もなければ、怪我にもつながります。私達は子供の頃からの学校教育の中で姿勢教育について残念ながらあまり受けていません。昔の教育の中では、体育や肉体訓練の中でそれは行われていたかもしれませんが、戦後生まれの私たちは、ある意味甘やかされて育ってしまっています。さらに近年は、学校教育の中で体育やクラブ活動などが減って、ますます姿勢教育を受ける機会が減っています。インストラクターになる方の中にも、日常の生活においても不良姿勢の方がいっぱいいらっしゃいます。まだ、運動特性で水泳指導されている方にも偏った姿勢の方が多く見受けられます。養成コースなどで姿勢づくりのカリキュラムは入れているものの、1回や2回のトレーニングで改善できるわけではなく、自分自身が自覚して日々の生活の中でもどのように取り組んでいくかが重要です。それでは、正しい姿勢というのはどういうことなのでしょうか?一般的には、身体の左右、前後、上下がバランスが取れていることをいいますが、インストラクターとしては「姿勢」を身体の中心軸をどのように作るかということで考えたいと思います。身体の軸とはセンターライン(身体の中心)のことをいい、そのセンターラインをきちんと定めることで、そこが支点となって手足の動きが楽に自由に行えるようになるのです。

 

身体の軸作り

まず、自分のセンターラインをきちんと作るためには、足裏の機能と骨格のアライメントが整っていることが重要です。日々、足裏をマッサージしたり、足首、足指周りのストレッチなど行いましょう。小さなボールを足裏で転がしてもいい(写真)ですし、バランスディスク(写真)や青竹を踏んで片足でバランスが取れるようにするだけでも変わってきます。アクアダンスの動きには、片足荷重の動き(ロッキング、キッキング、ジョギングなど)が多いですから、片足でのバランス力は不可欠ですね。実際には足裏の踵、親指の付け根(拇指球)、小指の付け根(小指球)に均等に体重が乗ることが望ましいのですが、小指側に体重がかかりやすいので注意が必要です。ロッキング動作のときなどに足のスタンスが広すぎて身体を左右に大きく揺らしているとおこりやすいので気をつけましょう。修正方法としては、腿の内側にボールやタオルを挟んで内腿に力を入れるトレーニングをしたり、足裏でタオルを手繰り寄せるタオルギャザーなどすると下肢の機能性がよくなります。

次に、下肢のアライメントです。少なくとも膝と足の指先が同じ方向を向くようにしましょう。膝を曲げたときに、歪みが出やすいのでスクワットや片足スクワットで腿の筋肉をバランスよく鍛えることが大事です。鏡で自分自身の下肢のアライメントを一度確認してみましょう。

 さらに骨盤から脊柱の体幹部分となります。耳たぶと肩、骨盤(股関節外側の大転子)が横から見て1直線になるのが望ましいのです。アクアの指導者の方は、プールを覗き込んだり、お客様と目線を合わせようとするとどうしても前かがみとなり、姿勢が崩れやすくなります。動きも悪くなりますが、何よりも腰、膝への負担が大きくなるので注意が必要です。まず、デモンストレーションをするときは、目線を遠くに置くか、プールサイドに立つ位置を少し後方にしてお客様と距離を作るとよいでしょう。さらに見本をデモンストレーションするときと、参加者にアイコンタクトやコミュニケーションをとるなど直接的なアプローチをする場合は、動きを止めて

しゃがむ、立ち位置を変えるなどの工夫が必要です。実際には、目的に応じて指導者自身が動いたり動きを止めたりするほうが、わかりやすいことのほうが多いのです。また体幹部分のアライメント作りは、コアといわれる体幹の中心部を鍛えることで得られます。ボールの上に座ってバランスをとる、壁に背中を押し付けてスクワットや手足の操作をしてみるなどさまざまなトレーニング方法があります。専門書を読んで自分自身のトレーニングを日々の日課にしていきましょう。ちなみに私はストレッチポールを使ってピラティスのワークアウトをするのが大好きです(写真)。ストレッチポールを5~10分ほど行うと驚くくらい背中がスッとまっすぐに伸びて、

身長が伸びたような感じがあり、さらに手足の動作が楽になってきます。1mくらいの円筒状の器具ですが、その不安定なポールの上で、バランス運動をおこなっていきます。短時間のトレーニングで効果が実感できるのでオススメです。

 

 

 「姿勢」という字には「勢」という字がありますね。つまり姿勢がいいということは、「勢いのあるレッスン」つまり「エネルギッシュなレッスン」ができるということにつながります。「エネルギッシュなレッスン」というと、とかく指導者自身がやみくもに声を大きく出したり、大きく動きすぎたりすることが多く、そのことが疲労困憊の原因になっていたりします。参加者は水中でそれを冷静に見ていますから、「一生懸命やってくれるのはわかるけど、何を言っているのか、何をやればいいのかさっぱりわからない!」ということになります。悠然と構えることでレッスンの空気を変えて、集中力を高めることにもなります。自分の身体からにじみ出るエネルギーを絶やすことなく成長させていくためにも、姿勢を改善し維持することは、地味なトレーニングの積み重ねでしか得られません。ローマは1日にしてならず!毎日の歯磨きや顔のお手入れのように繰り返し、かっこよく素敵なインストラクターとして輝くために行っていきましょう。

次月は、手の操作スカリングについてです。

 

 

 

 

*尾陰由美子の15分間姿勢改善トレーニング(例)

  • 足首まわし、足指ほぐし、足裏のマッサージを(5分)
  • タオルを足裏で掴んで離すというタオルギャザー(1~2分)
  • ストレッチポールに寝る(3分)
  • ストレッチポールの上でネックカール(へそのぞき)と片足上げバランス(3分)
  • 壁もたれスクワット10回×2セット