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No.19 アクアエクササイズのムーブメントとは?~下肢の連動性~

クラブパートナー誌 2007年7月掲載

アクアエクササイズの指導の中で、最もつらいのがデモンストレーションとよくいわれます。高温多湿の中で動くことだけでも疲労しますが、さらにウォータームーブメントの表現となると下肢の筋力、バランス力、持久力が要求されます。一番大事なことは、むやみやたらに動き続けないことですが、自分が動きを止めてしまうと参加者も止まってしまうということでついつい動き続けてしまう方も多いようです。自分の身体を守るためにもなるべくデモんストレーションの時間を少なくするためには、明確な動作表現による動きの伝達と参加者が動き続けるような指示(指導)が必要になります。私自身も半月板の無い膝を労わりながらの日々のレッスンですので、下肢への配慮はかかせません。全員が一斉に同じ動きをするアクアダンスやウォーキングなどは、明確な動作指示を見せることで、参加者は動きやすくなります。全員が少しでも早く動きをキャッチしてくれれば、指導者はデモンストレーションをやめて、参加者とコミュニケーションをとったり、動きのアドバイスを加えることができます。無駄なエネルギーの消耗を避けるためにも、明確な動作表現を身につけましょう。

 

ということで今月は、ウォータームーブメントの最も難しいといわれる下肢の使い方です。重力に拮抗した動作様式の陸上とは違い、浮力に従った動き、浮力に抵抗する動き、浮力に支えられた動きを表現しなければなりません。おまけに片足荷重になることが多いので、片足で身体を支えるバランス力も必要です。ここでは、2つに分けてまず片足でのバランス動作(ピボットスタンス)についてと股関節-膝関節-足関節が協調しあって動かすクッション動作に分けて説明と練習方法をお伝えしようと思います。

 

まず、ピボットスタンスですが片足で立ったときに、両足で立っていたときと同じ頭の高さを維持し、骨盤が左右にぶれたり、ずれたりしていないか左右交互にチェックしてみましょう。お尻の横側の中殿筋が弱くなっていると片足になったときに立っている側のほうに骨盤がずれて、上げている足のほうの骨盤が下がります。そうすると足が上がらないので水中で足がふわっと上がったように見えません。このような状態を「トレンデレンブルグ」といいますが、中殿筋の弱い人に起こりますので、まずは片足で立って骨盤を安定させる練習を行います。そのためには、足裏の使い方も重要になってきます。足の裏側のアーチが下がって偏平足気味になっていたり、小指側に体重が逃げているとバランスよく立てないのです。素足になって足裏を丁寧にマッサージしましょう。特に親指から小指を11本丁寧に引っ張り出し、指の間の隙間を作るように開き、足先の甲側を左右に開きながら足裏のほうに巻き込むようにマッサージします。さらに足裏を拳でよくしごき、踵と親指の付け根を持ってかかとを外側へ、親指付け根(拇指)を内側に雑巾を絞るようなイメージで捻ります。他の方法としては、青竹を踏んだり、タオルを足裏で手繰り寄せるタオルギャザーをしたり、小さなボールを足裏で掴むのも良い方法です。次に膝が曲がっていても膝の左右のぐらつきが出てしまうので、膝裏をしっかり伸ばすようにします。足裏にタオルをひっかけてかかとを坐骨から押し出すようにして腿裏側のストレッチを行います。上体を倒すのではなく、あくまでもかかとを突き出すようにしたほうがよく伸びます。また、長座位をとって片方の膝裏にボールを置きそのボールを押しながらかかとを突き出すようにするのもいい方法です。膝裏側のストレッチとともに膝蓋骨を安定させる大腿四頭筋を使うことになるので、膝が内や外に入って不安定な方は、是非お試しください。最後に、コアの安定も含めて下肢をコントロールするために内腿を股関節の外旋をしながらひきしめられると下肢のアライメントがよくなってきます。立位でも座位でも仰臥位でもかまいませんので腿の内側にボールをはさみ、つま先を外に回しながらボールを内側に押し込んでいきます。このときに、臀部をラップで包むようなイメージで左右のお尻を内側に巻き込むようにします。こうやって、下肢のコンディショニングをした後は、片足で立ったときには見違えるように安定したピボットスタンスが保てます。片足の安定力が増してくると、姿勢もよくなりますし、動かしている部分の見栄えもよくなってきます。

 

次に下肢のクッション動作です。一番のポイントは、踵の動きになります。足首の柔軟性に欠けていると踵を上げたり下げたりするカーフレイズのような動作がうまくできません。また足首の柔軟性は股関節の動きにも関係してきますので、まずは、踵を上げたときに足指付け根で立てるように、このときは下肢をしっかり伸展させましょう。次に着地時の踵が床に着いたときは、膝と股関節が屈曲した状態で上体が少し前傾になってきます。ちょうど、スクワットをするときのスタートポジションのようなイメージです。つまり、スクワット運動にカーフレイズを加えているとイメージして下肢の動作練習を行います。さらに、水中での動作のイメージを出すためには、しゃがみこむときのほうにポイント(アクセント)をおいて、臀部からも腿裏あたりに大きな風船があるイメージで空気を圧縮するように屈伸します。また、立ち上がるときは浮力に助けられて伸び上がるので、大腿部で立ち上がるというよりは、内腿から腹部を意識して頭を上のほうに引っ張られるようなイメージで行います。

ほんの少ししゃがむほうに時間をかけるようにすると、水を捉えた動きに見えます。

両足荷重でのジャンピングやバウンディングは、まだ練習しやすいのですがこれに片足荷重のロッキング、キッキング、ジョギングとなってくるとさらに難しくなってきます。片足荷重の場合は、バランス力に欠けているとクッション動作は表現できませんので、まずは先にピボットのバランス力をつけて、次に小さな可動域で練習を始めてください。アクアエクササイズのインストラクターによくありがちなのが、オーバーアクションによる動作のコントロール不足です。大きく動くことは、元気いっぱいに見えますが、体の軸バランスをくずしてかえってわかりづらかったり、何よりも怪我にもつながりやすいのです。自分の身体のサイズに合わせたフレーム(両手両足を自然に開いて立ったときの無理のない位置)の中で動くようにすることです。ありがちなのがロッキング時のスタンスが広い、キッキング時の足の上げすぎです。無理な可動域でのオーバーアクションを避け、ていねいなクッション動作で動きを美しく見せるようにしましょう。

 

動作に関しては1にも2にも練習あるのみです。反復する中で身についていきますので、レッスン後のケアも含めて日々繰り返して行いましょう。

 

*尾陰由美子の10分間下肢のクッション動作練習法

  • 足裏でタオルギャザー
  • 内腿にボールをはさんで、つま先を外に回しながらボールをはさむ
  • 足首回しと踵突き出しハムストリングストレッチ
  • 内腿にボールをはさんで、スクワット&カーフレイズ
  • 1,2で膝を曲げ、3で膝を伸ばして立ち上がるリズムでスクワット&カーフレイズ
  • 腰幅に足を開き、⑤のリズムで膝を曲げたときに片方の足を少し持ち上げて片足荷重になる。交互に行う
  • 120BPMのメトロノームに合わせて練習