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No.32 ターニングポイント(転機)

クラブパートナー誌 2008年8月掲載

先日76日(日)に金沢にあるエイムムーンフォートで、毎年恒例の「エイムセッション in 金沢」が開催されました。北陸の地で毎年多くの指導者が集まって行われるフィットネスクラブ主催のセミナーです。今年も東京や広島、岐阜など各方面から講師の先生方をお招きしてのセッションでしたが、その中でも50名以上の参加があった「パネルディスカッション」が興味深い内容でした。

 ここ数年は、フィットネスクラブ各社主催のセッションや研修会が増える中で、インストラクターの意識や学び方も変わってきています。従来のような「コリオグラフィーのネタ」を習得するものから、さまざまな運動の考え方、取り組み方を学ぶような基本的な講座に人気があるようです。また、私もここ12年シンポジウムやパネルディスカッションに招かれたり、依頼をされることが多くなっていることを考えると、お互いに情報を共有したり、交換したり、考えていくような講座も目立つようになって来ました。フィットネス業界も四半世紀を過ぎ、次世代の指導者へのメッセージだったり、問題提起が積極的になされているようにも感じます。

 実は、昔はそんなことは、同じ職場のクラブの中で、先輩後輩の関係や上司と部下、同じスタッフ同士でコミュニケーションを通して行われてきたかと思うのですが、そういったことが難しくなっている為に、パネルディスカッションのような講座の必要が出てくるのでしょうか?エイムセッションでのパネルディスカッションは、無料講座でもあったために参加者がたくさん集まっていました。

 今回のテーマは、インストラクターが「疲れているのでは?」「頑張りすぎているのでは?」「さまざまな不安の中で苦しんでいるのでは?」「楽しく仕事ができていないのでは?」というクラブ側の危惧から、「自分が好き?」~楽に前進していくためのナビゲーション~と題して、インストラクターを元気にしていこう!という目的で行われました。井上トキ子氏、増田俊逸氏、岩崎浩美氏、そして私の4人がナビゲーターとなり、参加者を4つのグループに分けて、11人の講師がそのグループを回っていくという形で進められました。全部で4セッションⅠ)不安と不満 Ⅱ)何故? Ⅲ)変えられること、変えられないこと Ⅳ)「楽」な自分をテーマに話し合っていただきました。

 最近のフィットネスの現場における問題やインストラクターが抱える問題を多くの参加者は素直に言葉にしてくれました。通常、パネルディスカッションというとパネラーの話が一方的になる中で、パネラーが参加者の中に入り込んで等身大で話を聞きだすというスタイルをとったために、フランクにいろんな問題提起がなされたようです。ここでは、答えを導き出すというより、さまざまな問題をみんなで共有しながらともに考えていくことにポイントがおかれました。多くのインストラクターは、それぞれの中に不安や不満はあるものの、それを誰かのせいにしたところで、何の解決をもみないことを理解していました。さまざまな問題をどのように解決していくかは、自分の意識、考え、行動の変化でしかないことを知っているのです。ただ、一人で問題に直面していくには、しんどかったり、つらかったり、逃げ出したくなったりやる気を失せたりするのです。パネルディスカッションが進むにつれ、参加者の表情が少しずつ明るくなっていたのは、インストラクター同士のコミュニケーションを通して、浄化されていく自分があったからのようです。

 今回、このようなパネルディスカッションができたことは、やはりもっとフリーという不安定な立場のインストラクターとのコミュニケーションをとることで、彼らのやる気や意欲を高め、フィットネスクラブの戦力となってくれることをクラブ経営者たちは、理解しなければなりません。クラブの意向や方針を押し付けるだけでは、インストラクターの士気を高めることはできないのです。フィットネスの業界がきびしいからこそ、今まさに従来のやり方、仕組み、考え方をいったん置いて、面倒くさいこと、手のかかることにチャレンジしなければと思います。フィットネスの現場におけるサービスとは、「やる気のあるインストラクターの指導力」につきるのです。私が思うに、今厳しいフィットネス業界だからこそそれがチャンスです。フィットネス業界がステップアップするためのターニングポイント(転機)が来ているのだと思います。

 私自身の転機は、今までに大きく4回ありました。その4回とも、自分自身が落ち込んだりやる気を失ったり、不安になったりする中で新しいことにチャレンジすることで乗り越えられたような気がします。1度目は、大学受験の失敗を通して、「目的を持たずにチャレンジしても成功しない!」ことを学びました。18歳のときですからそれまで失敗する経験が少なかった私にとっては、強い挫折感からしばらくは目標が見出せなかったことを覚えています。でも、その失敗で自分の将来、やりたいこと、目標をいつも考えるようになったことが、自分の足で行動を起こすきっかけとなりました。親からの自立だったともいえます。

 2つ目の転機は、結婚と妊娠でした。今回のパネルディスカッションでも挙げられていた問題です。私の場合も例に漏れず、仕事が減る、仕事ができない、みんなから取り残されるという不安との戦いでした。どうしても何かの形で仕事をしたいという思いから、レッスンインストラクターということだけでなく、プログラム提案や企画という形での業務にシフトしたことで在宅での仕事が得られ、家庭との両立ができたわけです。大好きなレッスンを少しあきらめたことで、違うアプローチでフィットネスに関わることを知りました。

 3つ目の転機は、インストラクターという立場からマネジメント、コンサルティングという業務が増える中での人間関係の難しさに健康を損なったことでした。すべてを自分が一人で抱え込んで、必死にもがいていたために気がつくと呼吸がうまくできない「ストレス性の過換気症候群」になっていました。自分の立場やポジションに必死になっていたのでしょう。強い責任感を持ちすぎたために、周りとの調和がとれず信頼関係がうまく作れなかったのです。このときに思い切って、長年の夢だったドイツ行きを決め、仕事も家庭も少し忘れて、自分の本当にやりたいこと、できることを思い出してみました。2週間のヨーロッパ研修は、肩書きやポジションを捨てる決心と、自分の目標を再確認し新しい試みにチャレンジする勇気ときっかけを得ることができました。

 そして4つ目は、女性として家庭と仕事の両立をずっと支えてくれた最良のブレーンでもあった母の死によって、「自分は決して一人でここまで来たのではなく、多くの人に支えられてきたこと」を改めて知ることとなりました。フリーインストラクターという立場は、どうしても一人で頑張ってしまうために孤独になりがちですが、やはり家族や友人、職場の上司や仲間によって仕事をさせてもらえているのだということです。このことから、私はNPO法人を立ち上げて、一人で乗りこえられないことも「同じ目標」を共有する仲間とともに活動していける喜びややりがいを見出してほしいということで、フリーインストラクターだけで協会を立ち上げたのでした。

 こうして見ていくと、自分の成長やステップアップの時には、いつも苦しいこと、悲しいこと、つらいこと、不安や不満が渦巻いていたことを思い出します。でもそのことが自分を見直すきっかけになり、目標を見出す機会になったのです。そして、過去にとらわれないこと、誰かのせいにしないこと、一人で抱え込みすぎないことを知りました。

 インストラクターの皆さんが、いままさにいろんな問題で不安になっていることがあったなら、それはきっと自分が変化、進化していくチャンスです。少し荷物を下ろして、楽になった自分の視点からもう一度自分を見つめなおしてもらえたらと思います。「ピンチは最大のチャンス」ですから・・・転機は、自分しだいでいつでも訪れるのだと思います。