No.35 新しいアプローチとは?~スイス“ベルンアクア”の視察より~
クラブパートナー誌 2008年11月掲載
今年もドイツ&スイスと12日間のフィットネス&スパ施設の視察とさまざまなプログラムの体験研修に行ってきました。クラブパートナーの原稿締め切りが、毎月15日なのですが、その締切日に帰ってきて、必死でパソコンを叩いてるわけですから、今月号の内容は本当にホットな内容です。さらに、10月8日(水)ベルン郊外のベルンブリューネンにできたWESTSIDE(MIGROS出資)の中にできた、「ベルンアクア」の視察とマーケティングを学ぶ講習をレポートするのですから、さらにホットです。
このベルンアクアのマネージメントディレクターが、毎年ヨーロッパ研修でお世話になっているオリバー・ハインツ氏なのです。彼は、もともと理学療法士でしたが、赤字施設だったバッドベリンゲンのクアディレクターを5年ほど務めて、単年度黒字に転換させた手腕の持ち主です。その彼が、スイスのMIGROS社からの誘いを受けて、ベルンブリューネンの都市開発と共にスイスでNo.1といわれるスパ&フィットネス施設の責任者となったわけです。すでに昨年より1年間かけて、施設作りとスタッフの採用、研修、サービスの内容を築きあげただけあって、「スイス初」「スイスでNo.1」「他にはない」「今までとはやり方が違う」「新しいもの」がたくさん詰まった施設です。ここまで、オリバー・ハインツ氏が「No.1」「新しさ」にこだわったわけは、従来と同じやり方では、マーケットが限られてしまうという危機感から、新しい顧客を獲得する為にターゲットをどこに絞り、どのようにアプローチするかにこだわった結果のようです。
この他にはない施設作りの根底にあるのが「五感に訴える施設」ということでした。プロモーションしかり、施設のデザインしかり、スタッフのユニフォームや施設内のさまざまな備品、さらにプログラム内容と確かにさまざまな工夫と仕掛けが見られます。私たちは、オープンの日に現地に到着し、ごった返しの中でいろんなハプニングに見舞われていたハインツ氏の迎えを受け、翌日から4日間この施設を堪能させていただきました。今月は、主に施設作りの考え方をレポートします。
まず、立地条件が必ずしもいいとは思われない「ベルンブリューネン」という地に施設を作るわけですから、とにもかくにも話題性が必要ですし、わざわざ足を運んでもらう仕掛けの必要があります。ハインツ氏が考えたのは、「水を使って感覚に訴える世界を作り出す」ということでした。施設はレジャープールゾーン、スパゾーン、ローマンアイリッシュゾーン、サウナゾーン、フィットネスゾーンとそのどれもが、五感に訴える新しい試みに満ちていました。そのため、逆にわかりにくかったり、サウナやスパはどう利用したものか戸惑うこともありましたが、そのワクワク感やドキドキ感がここの売りのようです。建物の設計そのものがとても不思議なつくりで垂直の入り口や通路はほとんどなく、斜めに切り込んだシャープなラインの組み合わせによる造りになっています。そのため、入り口の向こう側の景色や雰囲気はまったく見えず、入り口を通過してそこに新しい空間が存在することを知るのです。従来のあたりまえの感覚をどんどん裏切っていくのです。そのため、目を凝らし、耳を澄まし、手触りを確認し、香りを嗅ぎだしていかなければなりません。安心した空間、慣れきった空間では私たちの五感は本当に働いていないんだということをつくずく思い知ります。
このように、他の施設とは違うやり方、新しい試みをふんだんに取り入れることで五感がとぎすまされ、たくさんの期待感が生まれていきます。
そして、その期待感を胸に実際に体験していくのです。期待を上回る感動体験は、施設へのリピートにつながってきます。「水」というアイテムをふんだんに生かして、そこに光と音と香りをブレンドしてそれぞれのエリアに感動を作り出していきます。例えば、レジャープールには、光と水のシャワー、アロマの香りを駆使したスライダーがあり、水中照明は色を変えながら、外からの光と共にプールをさまざまに変化させてくれます。また子どものときに戻ってワクワク、ドキドキ楽しめるような仕掛けがいっぱいあるのです。サウナゾーンには、ろうそくを灯して、ろうそくの火のゆらめきが作り出す光と影のコラボレーションを楽しむことができます。スパゾーンには、クラゲがゆったりと心地よく泳ぐ姿にリラックスしながらマッサージを受けることができます。ほんの一例ですが、このようにお客様目線の施設作りがなされているわけです。
こうして、ハインツ氏は今までのやり方を壊し、新しいやり方を創出することで新しい利益を生み出すと考えたようです。私たちが滞在した4日間において「ベルンアクア」の評判は、トラブルがあったにもかかわらずクレームなどほとんどなく、おおむね上々との事でした。
さて、今回この施設を視察するにあたって、ハインツ氏にお願いしていたマーケティングのセミナーがありました。そこでのレクチャーが印象深かったので、少しレポートしたいと思います。
ハインツ氏から出された課題です。
4つの黒い点を結ぶと四角い枠ができます。それではこの4つの黒い点を結ぶというルールを破ることなく枠を広げるためにはどうすればいいか?
と、このように直線で結ぶのではなく曲線で結んでみたり、菱形にしてみると枠がぐんと広がっていきます。つまり、スパ&フィットネスというルールを変えることなく枠を広げるための発想をしたということです。限界を超えた枠を広げていくことが大切だということでした。私たちは、つい既存の形や方法にとらわれすぎてしまいます。勇気を持って日常的なことから離れてみる必要があるということでした。
と、このように考えていくとすでに出来上がったベルンアクアは、もう日常的なものになりつつあるということです。それゆえに、絶えず新しいものを考えていく、次のものを考えていく開発途上の中にいつもいるとのことでした。それは、日常的な探索を繰り返すことで生み出されることに他なりません。
この考え方を私たちのフィットネスやスイミングスクールに持ち込んでみたらどうでしょうか?
施設で運動をする、フィットネス活動をするというルールを破らずに枠を広げる方法は・・・?日本の施設の多くは、ルールを破って、ルールを忘れて枠を広げようとしていると感じるのは私だけでしょうか?私たちインストラクターのなすべきことはフィットネスの指導です。そのルールに基づいて枠を広げるための工夫を考えてみたいものです。フィットネスクラブやプール施設に新しいターゲット層を取り込むための枠の拡大は、私たちの日常の中に答えがあるように思います。インストラクターとしての五感を働かせ、日常探索に出かけたいものです。
来月号は、さらにどのように顧客にアプローチし、舞台づくりをどうするのかレポートを続けたいと思います。